2013-01-05

三枝俊介(ショコラティエ パレ ド オール) 2013. January.10th

1:パレ ド オールのショコラには日本酒とのマリアージュのショコラが沢山ありますね。日本酒とショコラの相性について、いつごろからアイデアを練られていたのでしょうか?「宮城の酒蔵 利き酒ショコラ」のきっかけが震災の後からというお話でしたが、それから思いついたカップリングでしょうか?ワインを飲んでショコラを楽しむという事はよくレストランやカフェなどでみかけますが 日本酒を飲みながらショコラを楽しむというのは日本ではあまり見かけないことだと思うのですが。

三枝俊介 :
日本酒との取り組みは京王百貨店の菓子バイヤーが前職で日本酒バイヤーをされていて、話を打ち合わせるうちに日本酒で利き酒の様なショコラが出来ないかという話に展開し、それまでウイスキーでは試みていたので2008年(2009年?)のバレンタインから始めました。最初は味が出ない為、多量に入れると固まらないなど問題続出の中作っていました。3年程やっている間にルセットも出来つつあったところで、震災がありました。震災の後、店で募金などしながら何か菓子を通して出来ないかという中で、その蔵元の酒を使って日本酒のショコラを作って売ろうということで、宮城の利き酒が出来、自分で現地も訪れ、その様子はTVでも紹介されました。その後、自分以外のシェフにも話を持ちかけて「スイーツキャンドルプロジェクト」に発展しています。


2:フランスでは日本酒が注目されていますね。お米のワインは展示会などで注目されていますが、日本人として三枝ショフはその点とショコラとの関係をどうお考えでしょうか?

三枝俊介 :
日本でのみお米の酒が作られており、和食が世界に広まる中で最もマリアージュする酒として日本酒以上のものはなく、特に魚に対してワインはかなり合わせるのが難しいものがありますが、日本酒はほぼ全体で合わせられる事から、まだ広がる可能性はあります。ただ、単独で飲んだ時、その香りや味わいの好みが分かれる酒ですが、良質な蔵の酒は本当に素晴らしい風味、旨みを持っています。ショコラと日本酒というのは、和食とワインの関係という感じがします。合うもの合わないものがある中で、酒の個性も生かしつつショコラとのマッチングという点では正解がたくさんある感じではありません。特に蔵ごとに違う風味というのは難しい事です。


3: ショコラティエ、この仕事において最も大変だったのは?

三枝俊介 :
日本のマーケットの未熟さと日本の暑さです。海外の特に日常的にショコラを子供から大人までが食べるのと違い、日本ではもっと大衆的で安価なチョコレート菓子は多くとも、本格高級ショコラの市場はバレンタインなどの特別な催事以外ではブランド作りからスタートして評価を頂き、売れる様になるまでがかなり厳しいのです。もう一つ、気候の問題はショコラの品質や保存・運搬にかかわるうえ、日本は最近、春秋が減って1年の半分近くが暑い、しかも湿度の高い気候が多く、これが製造にも大きく影響します。作りづらいうえに売れにくいのです。


4:パレ ド オールには常時40種類以上ものショコラが並んでいるそうですが、いつも素材はご自身でお選びになるのでしょうか?素材の良さが新しい作品に結びつくということはよくあるのでしょうか?

三枝俊介 :
全てのショコラは自分で考案し、試作し完成させますので素材も自分で選びます。素材はベーシックなものは一通り揃えていますが、新しい発想は素材からとは限りません。又、他店にないオリジナルが多く、次世代ショコラと位置づけるショコラもある為に、種類をある程度夏冬と分けていますが、ほんの数種だけです。


5:最近カカオ豆の原産地で注目している場所はありますか?

三枝俊介 :
今年ハワイ産カカオに出会い、非常に面白い独特の個性がありました。カカオが育つぎりぎりの気候で、とりあえず植えた木で育ったものだけで収穫している為、偶然性の高い、ある意味予期せぬ味わいです。取扱いしたいのですが、なかなか高額なのと、先方がゆったりした方なのでバレンタインには間に合いませんでした。


6:ご自身にとってショコラとは?

三枝俊介 : パティシェを目指した人の最終到達点と考えています。

片手間では出来ず、ショコラティエだけをやっても全体像は見えず、パティスリーを20~30年やって来た中で初めてその位置と価値が見えるもので、ワインと同じく幅は狭いが奥がどこまでも深いと思います。


7:ショコラの種類にもよるとは思いますが、ショコラは舌でゆっくり溶かして楽しむものだと聞きますが ショコラ・ファンとしてどのようにショコラに取り組めば楽しめるのでしょうか?プロフェッショナルから見ていかがでしょうか?どのようにするのが良いのでしょうか?

三枝俊介 :
楽しみ方に決まりはありませんが、ボンボンショコラは2口くらいで食べるのがおすすめです。パクッと一口で食べる人もいますが、ショコラによっては断面を楽しんで欲しいものもありますし、口の中で広がる味わいの加減が1/2カットくらいが良いと思います。飲み物があれば、先ず飲んでからショコラを食べ、もう一度飲むと味の変化やマリアージュが楽しめます。


8:ショコラに合うお気に入りに日本茶というのはありますか?

三枝俊介 :
お茶で食べる時は、煎茶か熱湯玉露が良いと思いますが、チョコレートの種類によっては全く合わないものもあります。(たとえば、コーヒー風味とかスパイス系とか)茶道での抹茶は普通のお茶よりは味のインパクトが強くチョコレートに合わせ易く思います。


9:お抹茶とお菓子を楽しむお茶の時間には時に静寂さを求める場合はありますがシェフにとって「静寂」とは何でしょうか?

三枝俊介 : 物事の真理や道につながるもの

ものを味わうという事はそこに時間軸があります。余計なものを省き、非日常の空間の中で完成した世界観を創り出すのが茶の湯の世界です。耳を澄ましほんの小さな物音や息づかいに集中して初めて見えるものがあると思います。静寂とは単に音がせず、静かという事ではなく自分の中にある物事の真理や道につながるものだと思います。茶の湯はそこにつながる道を創り出す方法論を縮み出したものだと感じます。利休は偉いです。


10:おやつの時間で最も重要な要素はなんでしょうか?

三枝俊介 :
楽しむ心と前向きに方向を変えるきっかけ。いろんな事があってもおやつの時間を自分の転機にしていく力がお菓子にはあります。悩みがなければ単純にうきうきして楽しんで頂けば良いと思います。


11:ショコラについて情熱的なあなたですが仕事をしていて最も充実していると感じるのは、どのような時ですか?

三枝俊介 :
ショコラと向き合って対話している感覚になる時。無心になり集中して新しいルセットなどを作る時には特に、そこに利益や損得や妥協や打算的なものがなく、売れるとか売れないとか考えていない時間が現れます。そういう濃密な時間は充実感があります。そんな時に話しかけられると非常にいらだちますが・・・


12:ショコラは文化や芸術の一部でしょうか?御意見を伺いたいのですが。

三枝俊介 :
ショコラは食文化として認められるものだと思います。文化は或いは無くてもよく、あれば心や生活に潤いや豊かさを与えるものですから絵や音楽と共にふさわしい場所や時間が必要です。ただショコラは命を救う事もある(たとえば山の遭難など)食べものであり、全ての食べるものの中でもカカオにはほとんど欠点がなく、本当に不思議で完成度の高い特殊な食べ物といえます。また芸術としてはショコラで創られたアーティスティックな細工などで芸術的なものはありますが、ショコラを素材として使っているだけでショコラそのものが芸術という訳ではありません。


13:あなたにとって「美しさ」とは?

三枝俊介 : 輝きや生命力

輝きや生命力は美しいものだと思います。美しいと感じる時、必ずそれは生き生きとしていてエネルギーやオーラや生命力を感じます。花でも自然でも人でも食べものでもそういうものが欠けているものに美しさを感じる事はありません。


14:この仕事の魅力は何でしょうか?

三枝俊介 :
何もないところから自由に創り出せる事が魅力でしょうか。料理の様に素材があり、そのものを調理するのではなく、形のないものを使って形を創り出し、なおかつそれが人々の喜びに変わる事が素晴らしいのではないのでしょうか。


15:パレ ド オールのショコラは 健康も意識されているようにみえます。「フルーツ&乳酸菌ショコラ」などクリームやバターの代わりに豆乳や蜂蜜を素材として取り入れたり常に新しい健康を意識された商品を生み出されてらっしゃいます。大昔、ショコラは薬として王様しか飲めない高価で特別な物だったと本で読みました。ヨーロッパではそういう意識が高い気がします。ショコラを使ったエステサロンができていたりショコラダイエットが流行ったりしています。ショコラと健康、その点はいかがでしょうか?御意見を伺えますでしょうか。

三枝俊介 :
ショコラは偶然の様に完成された食べものであり、その効能は百益あって一害なしといえます。ただしチョコレートに加工した時、砂糖や乳製品などによって摂取しすぎてはいけないものやマイナスに結びつく要素が生まれる為、それを他のものに置き換えて身体によいものだけで創れるのではないかと思ったのが次世代ショコラです。自分も含め全ての人が年令を重ねた時にも味を犠牲にする事なく、楽しめるものを考えました。ただ味わいだけを考えるのではなく、成り立ちからを考えたショコラは今はまだなかなか理解されませんが、必要になってゆくと思います。


16:ショコラを創造するとき、何からインスピレーションを受けますか?

三枝俊介 :
いろんなものを常に見て、考えています。同じ道を歩いた時に他の人が気がつかないものを見ていたり、ヒントに出会うとそこからどんどん広がるイマジネーションを常に持っています。そういう考え方や感じ方が出来る性格や才能でしょうか?


17:これからショコラ愛好家にどういったところをアピールされたいでしょうか?

三枝俊介 :
あくまで嗜好品なので100人全員をおいしいと言わせる事も目指していませんし、逆にいろいろなタイプのショコラを作る事で自分の好みを捜してもらったり、段階的に食べ進む事で自分の味覚を向上させたり、またそんな事には関係なくマリアージュを楽しんだり・・・色々な楽しみがここにはありますよと伝えてほしいです。


18:日本のファンに向けて、メッセージをお願いします。

三枝俊介 :
カカオの産地や種類、またカカオ分が何%とか余りパレドオールではこだわっていません。というよりこだわらない事で視野が狭くならず逆に広くしていくことで新しい味わいを見つけたり、道が見えたりします。カカオは身体に良いとか言っても余り考えすぎない方がよく、シンプルにショコラの楽しみを見つけてもらえればと思います。有名なお店やきれいなパッケージの商品など世の中には価値と価格の合わないものもたくさんあります。先ずは一度パレドオールのショコラやマリアージュの提案を試して頂きたいと思います。本物を知り、本物を味わう事をおすすめしたい。機械では作れないショコラをぜひ多くの人に知って頂きたいと思います。おいしいですよ。


(This email's interview is current as of December. 2012)
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The Credit will read:Posted with permission from 三枝俊介
ショコラティエ パレ・ド・オール
Related website LINK:
CHOCOLATIER PALET D'OR
Patissier Chocolatier Melange

三枝俊介(Shunsuke SAEGUSA) プロフィール:
1956年生まれ 大阪府出身 「ホテルプラザ」で洋菓子の重鎮 安井寿一氏に師事。ガトー、デセール、ピエスモンテに加え、本やテレビ、プロ向きの講習など様々な仕事に関わる。安井寿一亡き後、90年に独立しアドバイザー等を経て91年にメランジュ、94年に清里マチス、その後、様々な展開をして2004年念願のショコラティエを開業し、2007年には東京にもパレドオールを開業。縁あってフランス・リヨンのベルナシオンに出会い、大きな影響と薫陶を受けた事がショコラティエを開業する大きなモチベーションとなった。

Information:
・ショコラティエ パレ ド オール 東京
東京都千代田区丸の内1-5-1新丸の内ビルディング 1F  tel.03-5293-8877
[平日] open 11:00- close 21:00 Last order 20:30 [日祝] open 11:00- close 20:00 Last order 19:30
・ショコラティエ パレ ド オール 大阪
大阪市北区梅田2-2-22ハービスPLAZA ENT 4F tel. 06-6341-8081
営業時間:open 11:00 - close 20:00 Last order 19:30

Questioner: Yukiko Yamaguchi
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