1:江ノ島駅から徒歩三分という情報がHPにありましたが、江の電からお店が見えたり、海水浴場が近くだったり、すてきですね。この場所のチョイスはどうしてでしょうか?ジェラートと鎌倉、その二つに関連性はありますか?
新 安夫:
ロンドンから引っ越す際、江の電の通るノスタルジックな雰囲気が気に入りこの場所への移住を決めました。まだその頃はF1のレースに帯同していたので、成田エクスプレスが近かったのも理由の1つになっていましたね。
2008年冬のリーマンショックで全ての状況が一変。仕事を続けるためにはロンドンへ戻る決断をしなければいけませんでした。しかし妻が臨月で簡単には決めることができなかった。そんな時に今の物件と出会ったんです。その場で「失敗したら高級車を海に沈めたと思えばいいさ!」なんて盛り上り、すぐさま仮押さえに不動産屋へ行きました。その時は何をするかは全く決めてなくて「海が近くて狭いから「アイス屋」似合いそうだな」なんて話していたのは覚えています。明日の暮らしも分からないような状況の中、焦っていて冷静な判断ができなかった結果がこの場所です。商業的にはさておき、ジェラートに似合うロケーションだとは思います。
2:ザ・マーケット・エスイーワンを開店するにあたって、参考にしたお店はありますか?また、ザ・マーケット・エスイーワンのコンセプトはなんでしょうか?
新 安夫:
特に参考にしたお店はありません。在英時に妻の仕事(アンティーク買い付け)の手伝いをしていた影響で古い道具や家具が好きになり、それはお店の雰囲気にも反映されています。
コンセプトは毎週土曜日に通っていたタワーブリッジの近くにあるBorough Marketが元になっています。在英時はそこで手に入れた新鮮な旬の素材を使って調理することが唯一の息抜きで、生活に欠かせない存在でした。店頭のフレーバーから季節の移ろいを感じることができるマーケットのようなジェラテリアでありたいという想いと、愛着のあったBorough Marketの郵便番号「SE1」を取って名付けました。
3:経歴を拝見させて頂きました。元々は日本料理店のシェフ、HONDA Racing F1チームの専属シェフを、そしてロンドンでもお仕事されていたそうですが、ジェラートを作る上でそれら過去の影響は感じられますか?
新 安夫:
もちろんです!これまで経験してきた仕事だけでなく、出会った人々、長く暮らしてきたロンドンからの影響が大きいです。自分がこれまで経験してきたことをジェラートで表現しようと思ったら、今のようなスタイルに自然と落ち着きました。
とはいえオープン当時は「本場イタリアンジェラート」が主流でしたので、イタリアらしくない自分のジェラートが皆さんに受け入れてもらえるのかという心配はありましたね。
4:ジェラート店を経営しようと思いついたきっかけは何だったのでしょうか?果物やジェラートが特にお好きだったのでしょうか?
新 安夫:
4坪のスペースでできることが限られていたので、候補は惣菜屋とアイスの二つに絞られていました。経歴から考えれば総菜屋が妥当でしょうが、妻が「江ノ電眺めながら美味しいジェラート食べることができたら最高だなぁ」なんて呟いていた言葉が頭に残っていて。仕事でイタリアへ行くとよくジェラートを食べ歩いていたこともあり、何とかなりそうと勘違いした部分もあったのかもしれません。未だにジェラートについて分からないことやはじめて気付くことも多く、あの時の勘違いを恨めしく思ったりします。
5:姉妹店イグル氷菓もそうですが、新さんにとって、冷たいデザートの魅力とは?なんでしょうか?
新 安夫:
口に入れた瞬間の人々の笑顔でしょうか。どんなに怖そうなおじさんでも、観光で疲れて立ち寄った人も、一口アイスを頬張った後はパーっと笑顔になります。その笑顔の瞬間に立ち会えることは、職人としての喜びでもあります。
6:あなたが子供の頃 どんなアイスが好きでしたか?
新 安夫:
市販アイスしかなかった時代なので、パピコやホームランバーかな。
7:ザ・マーケット・エスイーワンで、特にオススメのフレーバーは何でしょうか?
新 安夫:
島根県木次乳業の「山地酪農」を使用した「山のみるく」です。イギリスで飲んでいたものに近いミルクをと探し辿り着いたのが木次乳業でした。木次町へ伺った際、創始者の佐藤忠吉氏の自然に寄り添ったものづくりへの想いに強く心を打たれ、この精神はSE1のジェラートづくりにも影響を受けています。木次乳業のミルクはSE1のジェラートになくてはならない存在です。
8:一番のこだわりはなんでしょうか?お店を始めて学んだなってことはありますか?
新 安夫:
こだわりすぎないこと、です。味の核(ベース)となる部分がぶれなければ、他は気候や体感に任せ、自由にものづくりをしても問題ないと考えています。枠にとらわれないものづくり、それが自分の良さだと思うので。
学んだことはあまりにも多過ぎて一言では難しいですね。天候にはかなわない、お客さまの意見は半分聞いておく。かな。
9:あなたにとって美しさとはなんでしょうか?
新 安夫:
自然、内から出るもの。
10:仕事上、どんな時に一番満足感を味わいますか?
新 安夫:
たくさんの笑顔を見た時。
11:ザ・マーケット・エスイーワンの自慢は何ですか?
新 安夫:
飽きずに通い続けてくださるお客さまがいることです。多謝。
12:鎌倉で好きな場所は?
新 安夫:
雨の鎌倉。江ノ電。
13:クリスマスはデコレーション・アイスがみられるという情報を記事で拝見させていただきました。これはアイス・ケーキのことでしょうか?どんな感じになるのでしょうか?少しお話を教えてください。
新 安夫:
クリスマスにはご近所のドイツ菓子店「アウスリーベ」曽根さんのご協力のもと、毎年違ったアプローチのジェラートケーキを提供しています。まるごとアイス(ジェラート)ではなく、ケーキとしての楽しさもあり、最後の一口まで飽きずに食べていただけるように考えています。今年は…まだナイショです。ぜひHPをチェックしてください。
14:ザ・マーケット・エスイーワンのファンに一言お願いします。そして、次に挑戦しようとしていることは?
新 安夫:
これからの寒い冬に突入します。今冬も例年通りよろしくお願いします。
次ですか?ある日突然、SE1がそのまま天ぷら屋になっているかも?!
(This email's interview is current as of October. 2014)
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The Credit will read:
Posted with permission from 新 安夫( The Market SE1 )
Related website LINK:
湘南のジェラテリア:The Market SE1
The Market SE1
shop 情報:
神奈川県 藤沢市片瀬海岸1-6-6
[TEL] : 0466 24 8499
[営業時間]:11:00 ~ 18:00
新 安夫 (Yasuo ATARASHI) プロフィール:
1971年静岡生まれ。大阪あべの辻調理師専門学校出身。日本で7年間ほど赤坂の懐石料理「ととや魚新」(一つ星)、西麻布の「天ぷら魚新」で経験を積み、1998年に渡英。 ロンドンのMiyama Restaurant(Mayfair)、Mju Restaurant(Millennium Hotel, Knights Bridge)を経てHONDA Recing F1チームの専属シェフとして世界各国を帯同。 レースがオフの間はNobu London(一つ星)で働きながら、個人でケータリング、料理教室などを行う。2008年帰国。 2006年 F1 News Paper The Red BulletinにてChef of the Year受賞。
Questioner: Yukiko Yamaguchi
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