2010-01-06

ピエール・エルメ(パティシエ· ショコラティエ) 2010.January.20th

1:ピエール・エルメ・パリのホームページで"à la une"にある、パティスリーの名前はどれもいいですね。あなたがパティスリーの名前を付けるとき何を重要視なさいますか?

ピエール・エルメ:
作品の美味しさを表現するうえで、ネーミングは見た目と同じくらい重要です。たとえば「サティーヌ」は映画「ムーラン・ルージュ」のヒロインの名に由来しています。また、力強いティストのビター・チョコレートのボンボン・ショコラには「アンタンス」(強烈な、の意味)と名付けましたし、「イスパハン」は、この街の名を冠したバラの産地として知られるイランの都市(イスパハン=イスパファンともいう)にちなみました。このようにして味に意味が与えられ、作品が成立するのです。セサミ入りのボンボンショコラ「ウーブル・トア」のように、洒落で遊ぶのも好きです。このネーミングは「アリ・ババと40人の盗賊」に出てくるあのセリフをほのめかすサインなのです。「開け、ゴマ!」


2:パティスリーをプロデュースするとき、頭に浮かべる大切なキーワードを教えていただけますか?

ピエール・エルメ:
創造というのは、ある精神状態なんです。いつも突然アイディアがひらめきます。今だって、バニラとコショウを組み合わせたマカロンのことを考えています。また、人との会話や、イメージからインスピレーションを受けることもあります。たとえば「tarte aux loukoums」がそうです。友人のレバノン女性からインスパイアされ、ローズウォーター入りのルクム(アラブ菓子の一種)をライム、イチゴと組み合わせました。自分の想像から作品を創り上げ、驚きを生み出すのは、とてもわくわくします。作品に対する「えっ!?」という反応は、私にとっては賞讃です。去年、ワサビとグレープフルーツを使った作品をパーティをで試食してもらいましたが、その反響も様々でした。いくつものアンバンスをかいくぐって、非常にバランスのよいデザートができあがるものなのです。たとえばマスタード風味に控えめな甘さ、苦味、ほのかな酸味...これらの要素をおよそ何グラムにするか、大変微妙なバランスです。


3:パティスリーを創造するとき、何からインスピレーションを受けますか?

ピエール・エルメ:
私は好奇心旺盛なんです。食べることが好きですし、最高に素晴らしい味も、またその逆の味も知り尽くしています。私の創造性はそれら全てに着想を得ています。あるひとつの作品のためには、あらゆる種類の味覚が同等の価値をもって存在します。私にはいろいろな味を想像する能力があり、いろいろな味覚の存在を理解したうえで、その組み合わせを想像するのが好きです。こうした経験が、伝統やクオリティを保ちながらオリジナリティある作品を作り上げることを可能にしています。欲をいえばきりがないのですが、結果として自分自身の進歩になっています。どんどん広がっていく好奇心と驚くべき学習意欲をもって、新しい経験をモノにしていくのです。異なる食文化を発見できる旅行も、もちろん重要なインスピレーションの源です。その経験が、新しい素材の使用につながります。


4:あなたの好きな日本の景色はどこですか?

ピエール・エルメ:
この前日本を旅行したとき、静岡にある茶畑を訪れ、富士山麓の山岳地帯の真ん中でその文化に触れました。「茶」に興味を惹かれ、実際に触れ、匂いを感じ、茶葉にたくさんの種類があることも知りました。この旅行で、好奇心や、自分自身の食文化の知識を深めたいという思いがさらに強まりました。日本のお茶の作法に関していえば、次回来日する際にはぜひ、これからの茶道界を牽引していかれるであろう武者小路千家若宗匠・千宗屋さんの麻布にある茶室を訪問したいと思いました。


5:あなたの好きなパリの景色はどこですか?

ピエール・エルメ:
サンジェルマン・デ・プレ界隈にあるサン・シュルピス広場が好きです。2001年に私がパリで最初のブティックを開いた場所です。 *パリ6区のボナパルト通り(72 rue Bonaparte Paris 6e) この場所は、観光客と地元住民が混在する面白い地域です。文化が遍在し、サン・ジェルマン・デ・プレにしかない独特な雰囲気があるんです。晴れ晴れと天気の良い日には、サン・シュルピス広場で噴水の前のベンチに腰かけてマカロンやケーキを楽しもうとするグルマンたちが、ボナパルト通りのブティックから出てくるのを見かけます。


6:あなたにとってショコラとは?

ピエール・エルメ:
パティスリーにおいて大変重要な素材のひとつで、私の創作の中でも、とても重要な位置を占めています。アイスクリーム、ケーキ、ボンボンといったバリエーションに向いてますし、際立った味をもっています。様々な食感を生み出してくれます。ショコラを加工するのが好きです。ショコラという素材は生きていて、生き物とやりとりしているみたいです。ショコラを扱うときは、いつも温度やフォルムに細心の注意を払います。どうすればどうなるか、経験からショコラの扱いを知り尽くしているので、その味のちょっとしたニュアンスの変化をあらゆる方法で引き出すことができるのです。たとえば、フルーツの風味を高めて酸味を引き出したり、フォンダンショコラにするのとパリパリにするのとで口の中に残る時間を変えるなどして、ショコラの酸味や口溶けを自由自在に表現できます。私のショコラへの情熱は、最近出版した「Carrément Chocolat」(ピエール・エルメ&ダニエル・モントオ著、日本未発売)という本でも紹介しています。


7:ご自身のパティスリーでどれが一番好きですか?

ピエール・エルメ:
それはこれから作る作品です。 つまり、自分がよいと思うものがこれからも生まれ続けるということ!


8:あなたにとってパティスリーとは何ですか?

ピエール・エルメ:
音楽や絵画、彫刻と同様、まさに感性を表現できる一流の芸術だと思っています。私は、自分自身が食べたいもの、美味しいと思うものを作り出します。ケーキ、デザート、そしてボンボンショコラやアイスクリームを作ろうとするとき、まずそれらを頭の中でイメージします。自分の表現したい味覚、食感、ニュアンスや印象などを頭の中で想像し、組み立てていくのです。私のレシピは、自分の理念や感情を表現したものなのです。それらは私がイメージし、作り出したものを再現する方法を伝えるための記号にすぎません。ちょうど音楽における楽譜のようなものです。とはいえ、レシピを書き記しておくことは大切です。基礎を固めておくことで、いっそう自由に創造性を発揮できるようになるからです。このようにして、私の創造の営みは、時の経過、さまざまな出会い、いろいろな発見、季節の移り変わり、そして自らのインスピレーションに従って絶えず進化していきます。音楽にたとえれば、同じメロディを演奏するのであっても決して縛られずに自由に演奏して構わないように、スイーツも美味しさを表現するため、その表現方法は自由であっていいのですから。


9:若者へのアドバイスを御願いします。

ピエール・エルメ:
毎日100パーセントの情熱を持って生きることです。



(email interview 2009.09)
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All rights reserved by Pierre Hermé.
PIERRE HERMÉ LINK:
PIERRE HERMÉ PARIS
ピエール・エルメ・パリ(JAPAN サイト)

ピエール・エルメ プロフィール:
フランスパティスリー界の頂点を極めたパティシエ。
アルザスに4代続くパン菓子職人の家庭に生まれたピエール・エルメは、14歳で「ルノートル」に弟子入りし、この道に入りました。24歳にして「フォション」のシェフ・パティシエに就任し、11年間の在職中にはパティスリーに斬新な気品をもたらしました。1997年には「ラデュレ」のシェフ・パティシエ兼コンサルタントとして才能を発揮し、1998年自らのブランド、「ピエール・エルメ・パリ」を東京に出店し、2000年にはパリにも同店をオープン。そして2005年には日本初の路面店として、旗艦店「ピエール・エルメ・パリ青山」が誕生しました。また2007年には、世界で最も偉大なパティシエとして「レジオン・ドヌール勲章シェヴァリエ」を授賞、現在は国際的な地位を持つプロの菓子職人協会「ルレ・デセール」のトップパティシエとしても活躍。2009年には「クープ・デュ・モンド・デュ・ラ・パティスリー」の名誉審査委員長に就任。名声や地位に固執することなく常に新しい冒険と遊び心を忘れない彼は、「パティスリー界のピカソ」と称されます。

Questioner:Yukiko Yamaguchi
Translation :Satoko Kawabata, Yukiko Yamaguchi, PIERRE HERMÉ PARIS.

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